3Dプリンタを使ったシーバス用ルアーの作り方【モデリング編】

  • 2019年11月23日
  • 2019年11月26日
  • 雑記
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3Dプリンタを使ったことがあるだろうか?
使ったことがない方の多くは「高価で敷居が高い機械」と考えていなだろうか。

実際はそんなこともなく、家庭用の3Dプリンタであれば1.5万円で買える時代になってしまった。
7万円も出せば、一昔前の業務用3Dプリンタを凌駕するほどの性能のものが買える。

使い方にはノウハウは必要なものの、昔の機械より圧倒的に使い勝手も良くなってきているのだ。

既製品のルアーを買うのであれば、1000円、2000円はくだらない。
しかし、3Dプリンタルアーであれば、材料費は1kgで2500円程度で手に入る。
ルアー1つ作るのに、材料は30gもあれば十分。
あとは、接着剤とステンレスのワイヤー。そしてフックとスプリットリングがあれば作れてしまう。

下手すれば、ルアーのコストは1/10にもなってしまう。
しかも、自作したルアーで釣った喜びはプライスレスだ。

せっかくの土日に雨が降ってしまった…というときにも、自作のルアーを作る楽しみがあれば、最高ではなかろうか。
時間のないサンデーアングラーにも、3Dプリンタルアーにチャレンジしてほしいと思う。
一度良い形状ができてしまえば、量産も簡単だ。木製のハンドメイドルアーよりもよっぽど手軽に作れる

ちょっとでも興味が湧いた人は、記事を読んでどうやってルアーを作っていくのかを知ってほしい。
今回は、3Dプリンタでシーバス用のリップレスミノーを作る方法について紹介したいと思う。

私のルアー作りの目的

私は、石川県の能登に住んでいて海はすぐ近く。家から歩いて20秒程度のところでも、すぐに釣りができる。
そのため、天気が良ければ毎日釣りにでかけるが、釣りの頻度が多いのでルアーをなくすと費用がかさむ。
キャスティングが下手なので、すぐルアーを引っ掛ける…買った日にルアーをなくすこともしょっちゅう。

そこで、「ルアーの費用を抑えるためにどうすればいいのか」と考えたら、持っていた3Dプリンタを使えばいいんだと思ったのが作り始めたきっかけ。
要は、貧乏性から出てきた高次元のDIY精神だ。

前職では、3Dプリンタを毎日のように使っていたので、それなりに3Dプリンタに関する知識は豊富な方だと思っている。
そのせいか、ネットに載っているルアーの作り方は、設計がいまいち3Dプリンタの特性に合っていないなと思うものが多い。
こうしたほうが造形が安定するし、強度も高められて、微調整しやすいよねっていうやり方を自分なりに考えたつもりだ。

今回紹介するルアーの作り方は、魚が釣れればそれでいいというレベル。なので、仕上げなどにはこだわらない。
3Dプリンタから出力して、アイを取り付けたら釣りができる。なんていう、工数をできる限り少なくした作り方だ。
仕上げなどについて知りたい方は、別の記事を参考にするほうがいいと思う。

はっきりいって、人に見せて自慢できるような美しいルアーにはならない。でも、実用性が高くて、加工時間が少ないルアーはできる
最小限の力で作ったルアーでも案外釣れるのがいいところで、動きが悪くても微調整していく作業がまた楽しい。
3Dプリンタを使ったルアー作りは、時間のない忙しい人でも楽しめるように思う。だって、スイッチを入れたら勝手に形をつくってくれるんだもの。
人間が加工するのは、ルアーの貼り合わせとアイを作るぐらい。慣れれば15分もあればできてしまう。

興味のある方は、チャレンジしてほしい。
まずは、モデリングからやっていきましょう。

Fusion360を使ったモデリング

まずは、3Dプリンタで出力するモデリングデータを作成していく。
Fusion360でルアーを作る場合、多くの場合で「スカルプト」という手法が使われる。
しかし、私は「ロフトサーフェース」という手法を好んで使う。

「スカルプト」は、粘土をこねるように立体を作っていく方法。
「ロフトサーフェース」は、異なる平面に描いた、線と線をつなぎ合わせて面を作り、立体にしていく。

「スカルプト」のメリットは、自由度が高く、複雑でも形状を作り込めるが、一度作成した後の微調整が難しい
一方で、「ロフトサーフェース」を使った手法であれば、簡単な形状でしか作れない代わりに、簡単に微妙な設計変更を加えれられる

どうせ、一発で最適な形状なんて作れないのはわかりきっている話。
だからこそ、微調整のできる「ロフトサーフェース」でのルアー作りでトライ&エラーを繰り返すのが一番いい。
私も、釣れるなと思ったアクションを実現できたのは、プロトタイプを6つ作った頃
実際、6つ目のプロトタイプで、シーバスをゲットしたのもまた事実だ

やっぱり作ったルアーで釣るのは楽しい。お得感も満載だ。

余談はさておき、今回は「ロフトサーフェース」を使って、ルアーをまるごと造形するのではなく、左右に分けた状態で出力して最後に張り合わせるという手法を取る
なぜ、二分割にするかというと、まるごと造形する方法の場合、内部を作り込めないから。アイがヒートンになってしまうのも、3Dプリンタの積層目を割ってしまいそうであまり好きでない。
今回の作るものは、樹脂の密度を密にする部分と空洞にする部分を作り、ウェイトを入れない状態でも自立するような設計で作っていく。

・ABSは比重が1.05程度
・PLAは比重が1.25程度

と水よりも重いので、密に造形すると簡単に沈んでくれる。「手間と部品は極力少なく」がコンセプトだ。
個人的には、ルアーの割れにくさを考えるとABSをオススメするが、トウモロコシが原料で生分解性プラスチックのPLAも捨てがたい。
ただし、PLAは、ABSに比べて脆いし、ヤスリがけには適していない。そのため、現在はABSで造形することが多い
この辺りの話は話すと長くなるので、3Dプリンタでの造形編で詳しく解説しよう。

基本的なこの方法をマスターすれば、重心移動もできるルアーも問題なく作れるはずなので、まずは基本から抑えていこう。

1.ルアーのサイズを決める

まずは、ルアーのサイズを決める。

1-1.XY平面上に長方形のスケッチを描いて、サイズを描く。ここに描くのはルアーの高さと長さ。厳密なサイズではなく、サイズの目安となる枠なのでサクッと描こう。例では、高さ20mm、長さ110mmとした。

1-2.YZ平面上にもサイズの枠を描く。ルアーの厚みになるが半身分なので、実際の厚みの半分で長方形を描こう。例では、全幅16mmと設定し、スケッチは8mmで描いている。

2.ルアーを横から見たスケッチを描く

2-1.ソリッドメニューから、新規コンポーネントを作成して、名前を「body_L」とし、コンポーネントを選択する。

2-2.XY平面にスケッチを作成し、1-1で描いた長方形の中に収まるように、スプライン曲線を使って、ルアーの上部になる線を描く。基本的には、制御点は5つ程度がベスト。制御点を増やしすぎると微調整が面倒になってしまう。形は後で調整できるので、ざっくりにしておく。

2-3.続いて、ルアーの下部になる線をスプライン曲線で描く。制御点は2-2で描いた曲線の制御点と同じ数にする。こちらも形状はざっくりでいい。

2-4.上下のスプライン曲線の制御点を直線で繋いでいく。後で形状をドラッグして変更した際にうまく追従してくれるように、「一致」の拘束がついているか確認して作業を進めよう。すべての点を繋いだら、スケッチを終了する。ルアー先端の直線には、角度寸法を入れておけば、微調整する際にわかりやすい。

3.ルアーを正面から見たスケッチを書く

3-1.構築のメニューから、オフセット平面を選択し、XY平面を20mmほどオフセット。新しい平面を作る。

3-2.オフセットした平面に、先程描いたスプラインを繋ぐ直線の中点を描く。中点を描く際は、2-4で描いた直線を「プロジェクト」コマンドで引用し、それから直線の中間点に「点」コマンドを使って打ち込む。

3-3.メニューの構築から「3点を通る平面」を選択し、「オフセットした平面に描いた中間点」と「XY平面に描いた直線の端点2つ」の3つを選んで、新しい平面をすべての直線に対して作成する。

3-4.作成した平面ひとつひとつにルアーの輪郭となるスプラインを作成する。ルアー上側の制御点とルアー下側の制御点を結ぶ形で輪郭を描く。制御点は上下の輪郭と同じように5つにするのがベスト。

3-5.念の為、スプライン曲線の制御点に一致拘束がかかっているか確認しておく。

3-6.スプライン曲線の端点の正接ハンドルに対して、水平の拘束をかける。この作業により、最後にミラーコピーした際にも綺麗な接合面になる。この拘束がないと接合面がお尻みたいに割れてしまったり、スペードマークの先端みたいになってしまう。もちろん、お尻が好きな人は、拘束を掛けないのも一つの手。

3-7.作成したすべての平面に対して、スケッチの作成を繰り返し行う。制御点の数は、すべてのスケッチで同じ数する。

3-8.新規スケッチを作成し、ルアーの断面スプラインの真ん中の制御点を繋ぐ線を描いていき、スケッチの作業は終了。(※1)

(※1補足)3次元のスプラインが引けない場合は、設定を変更する必要がある。基本設定を開いて、画像の部分のチェックボックスにチェックを入れておこう。

この章で作成したスケッチを表示して、スプライン曲線の制御点をドラッグすれば、簡単に形状変更ができる。
次のルアーをソリッドにするの章が終わった段階で、形状を修正すれば変更した形状を即座に3Dで確認できるのでとても便利。

4.ルアーをソリッドにする

4-1.これまでに描いたスケッチを使ってソリッドを作成していく。ソリッド化する前にサーフェースを使って、面を作成する。
サーフェースのメニューに入り、ロフトを選択。

4-2.ロフトのプロファイルを選択。そして、前の章で作成したスプライン曲線を選択すると、スプライン同士を繋ぐ面がプレビューされる。

4-3.ロフトのレールを選択して、ルアー上端の曲線、ルアー中央の曲線、ルアー下端の曲線を選択し、OKをクリックする。そうすると、レールに指定した線に沿って面が作成され、面がなめらかになる。

4-4.前後と後ろ側の面がまだ作成できていないので、作成していく。サーフェースのメニューからパッチを選択し、輪郭を選択すると輪郭を埋める面が作成される。

4-5.4-4と同様の手順で、貼り合わせ面をパッチで作成する。

4-6.これまで作成したサーフェースを縫い合わせてソリッドにする。サーフェースのメニューからステッチを選択し、作成した4つのサーフェースからソリッドを作成。

ここまで終わったら、3章で作成したスプライン曲線の制御点をドラッグして形を整えていこう。
ドラッグで簡単に形状変更ができるのがロフトサーフェース手法最大の魅力だ。

5.アイを通す場所を作る

ラインアイやフックアイの形状を作る。完成したイメージはこんな感じ。

5-1.新規デザインを選択し、アイのデータを作成する。今回の例では、0.9mmのスレンレス線を使って楕円形のアイを作成するので、ステンレス線の中心線と内径と外径をスケッチしていく。

5-2.このままルアーに押し出しをしてしまうとクリアランスがないので、クリアランスを設ける。3Dプリンタの設定によってこの辺りの数値は異なるが、今回は片側0.15mmと設定した。

5-3.最後にアイの中心線を作成して、スケッチを終了する。

5-4.ソリッドのパイプコマンドを使って、中心線を選択しアイのソリッドデータを作成する。ワイヤー径は0.9mmを使用するので、断面サイズは0.9mmに設定する。フィーチャー編集の距離を調整すると実際のアイに近い形で作成できる。ただし、ルアーを作成するだけであれば、そこまで作り込む必要はない。

5-5.作図ができたら、デザインを保存する。

5-4.ルアー側のデザインに戻り、先程作成したアイのデータをドラッグ&ドロップしてコンポーネントをインポートする。

5-5.インポートしたデータを移動コマンドを使用して、好みの位置に移動させます。

5-6.位置をキャプチャし、ラインアイの位置を決める。

5-7.同様にフックアイもインポートして配置する。

5-7.ルアーのコンポーネントを選択して、アイのコンポーネントのスケッチのみを表示する。アイのスケッチを「プロジェクトを含める」から「プロジェクト」を選択し、5-3で作成したクリアランスのスケッチを選択。

5-8.5-7で作成したスケッチを選択し、押し出しコマンドを使ってルアーのボディを切り抜く。この時の押し出し量は、0.55mmとした。これは、0.9mmの線形の半分である0.45mmとクリアランス0.1mmと考えた数値。クリアランスは3Dプリンタの特性を考慮して微調整指定いこう。

6.ルアーの浮力調整をする

6-1.ルアーの浮力を調整するために、浮き袋的なものを作成する。ルアーの断面を選択し、適当に図のようなスケッチを作成。感覚的には、ルアーの体積の1/3くらいにすると丁度いいフローティングになる。

6-2.サーフェースの押し出しを選択し、先程作成したスケッチを押し出す。押し出し長さは、ルアーを貫通していればOK。

6-3.ソリッドメニューの修正にある「ボディ分割」を選択し、分割するボディにルアーのボディを選択。分割ツールにサーフェースのうちの一面を選択し、OKを押すとボディが分割される。

 

6-4.同様の手順でサーフェースの形状にルアーのボディを分割する。

 

6-5.ソリッドメニューの修正からシェルを選択し、分割したボディの外側の面以外の4面を選択する。シェルの厚みは1.5mm程度にして、シェルを掛ける。この時他のボディは一時的に非表示にしておくと作業がしやすい。

6-8.シェルを掛けたソリッドとその他のソリッドをソリッドメニューの「結合」を使って単一のソリッドにする。

これでほぼほぼデータはできたも同然。後は作ったデータをミラーコピーするだけ。
ちなみに目のくぼみとかは今回は割愛する。後ちょっとだ。

7.ルアーのボディをミラーコピーする

7-1.最後の仕上げとして、ルアーのボディをミラーコピーする。ソリッドメニューの作成から「ミラー」を選択。

7-2.パターンタイプを「コンポーネント」に設定し、ここまでで作成したルアーのコンポーネントを選択して、ミラーコピーする。

7-3.最後にコンポーネントを右クリックしてSTLデータを出力する。STLデータは3Dプリンタで造形するのに必要な拡張子。リファインメントは高にしてOKをクリックし、任意の場所に保存しよう。「body-L」「body-R」ともに出力しておく。これでデータの準備は完了だ。

次は3Dプリント編

かなり長い工程だったので疲れたとは思う。ただ、この工程さえマスターしてしまえば、様々なルアーのモデリングに応用ができる。
今回は、最低限の形をつくる部分以外は省略したが、色々応用を考えてみてほしい。

次は、3Dプリンタを使った造形編。
材質の選択や、造形機の紹介。そして、機械の設定についても踏み込んで解説していく。

乞うご期待。

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