3Dプリンタを使ったシーバス用ルアーの作り方【3Dプリント編】

  • 2019年12月4日
  • 2020年1月15日
  • 雑記
  • 4707view

前回に引続き、シーバス釣りに最適なルアー作りを解説。
今回は、3Dプリンタでの造形について詳しく見ていこう。
ルアー作りに最適な3Dプリンタや材料の選び方、そして、最適な造形方法についても解説する。
3Dプリンタを持っている人も、持っていない人も参考にしてほしい。

関連記事

3Dプリンタを使ったことがあるだろうか? 使ったことがない方の多くは「高価で敷居が高い機械」と考えていなだろうか。 実際はそんなこともなく、家庭用の3Dプリンタであれば1.5万円で買える時代になってしまった。 7万円も出せば、一昔[…]

ルアー作りに適した3Dプリンタ

ルアー作りに最適な3Dプリンタは、FDM(Fused Deposition Modeling / 熱溶解積層方式)という造形方式。
リールに巻かれた「熱可塑性樹脂」の材料を少しづつ溶かして立体を作る。
材料費やメンテナンスに掛かるコストが少なく、造形の速度もそこそこ速い。材質の種類も豊富だ。
そして何より、機械が安価で購入しやすい。私のような貧乏人には最高の選択となるだろう。
ただし、造形精度はそこまで高くはないといったデメリットがある。

3Dプリンタは、光造形という方式も一般化してきている。こちらは、造形の精度が高いのが特徴だが、造形の速度が遅い上に、大きなものの造形には向かない。そして、ランニングコストも高いため、気軽にルアーを作るという点では、FDM方式に劣っている。貧乏人には向かない。もし、コストと時間が掛かってでも市販のルアーのような精度で作りたいのなら、こっちを選ぶのもありだろう。

FDM方式の3Dプリンタは、安いものだと1.6万円という驚愕の値段で購入できてしまう。
このぐらいの価格で買えてしまうので、3Dプリンタに興味があるのであれば一度試してみるのがいい。気に入らなければメルカリとかヤフオクで売ってしまおう。

安すぎるものは不安であれば、5万円程度のプリンタを買えば満足できるように思う。
ルアー作りのみが目的なのであれば、小さな機械で十分満足できるはずだ。

もし、ABSで造形したいというこだわりがあるのであれば、ABSに対応した3Dプリンタを購入する必要があるので注意しよう。
ABSは溶かすための温度が230℃程度必要だ。なおかつ、収縮率が高く、造形したあとも高温を維持しなければ凄まじく造形物が反ってしまい使い物にならない。
このような理由から、ABSに対応した機械は高価になってしまう。

私の使用機『Flashforge / Adventurer3』

ちなみに私は、Flashforge社のAdventurer3を使用している。

この機械は、価格は7万くらい。家庭用としてはミドルクラスくらいの価格だ。
造形できるサイズを犠牲にした代わりに、造形精度が高いのが特徴で、ほとんど造形ミスをせずに仕上げてくれる。そのうえ、ヘッドの温度も240℃まで上がるので、ABSも造形できる。

家庭用として購入するなら、ベストな選択肢だと自信を持って言える。ただし、造形サイズは150x150x150mmなので、大型の造形はできないので注意。
デザインも3Dプリンタとは思えないほどシャレオツ。
そのデザイン性の高さは、引っ越し屋さんに電子レンジと勘違いされたほど。

ルアー作りに最適な材質

FDM方式で、ルアーを作る材質に最適なのは、PLAとABSの2種類。
それぞれ、メリットとデメリットがあるので、解説していこう。

PLA

PLAは、日本語でいうとポリ乳酸。
乳と付くからといって、原料に母乳を使っているわけではなく、トウモロコシを原料としている。全く理解できない。

PLAのメリット

PLAのメリットは、

・融点が低く安価な機械でも造形できる
・熱収縮が少ない
・比重が重いので重心を調整しやすい

といった点だ。

PLAは、融点が低く収縮率が低いのが特徴で、3Dプリンタ上では扱いやすく造形の失敗が少ない。
そして、意外にも比重は1.25と重めなので、設計の段階でルアーの構造を工夫すれば、重心を調整しやすいという特徴がある。

PLAのデメリット

PLAのデメリットは、

・もろくて割れやすい
・ヤスリがけが難しい

PLAは造形後の靭性に劣り、もろく割れやすいというデメリットがある。
そのため、ミノーやクランクベイトといった長くて薄いリップ形状を含むルアーを作るのにはあまり向かない。
そして、物性上ヤスリが入りにくく、削るのが難しい。仕上げにこだわるのであれば、この点は見過ごせないだろう。仕上げにこだわらないのであれば、気にする必要はあまりない。

ABS

ABSの正式名称は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンというややこしい名前
30歳を超えて童貞の人がこの名前を唱えると魔法が使えるようになる。しらんけど。
家電製品のカバーや部品にも多く使われている汎用プラスチックで、実は馴染み深いプラスチックだ。
3Dプリンタで使われるABSは3Dプリンタ専用に配合されている。

ABSのメリット

ABSのメリットは、

・強度が高い
・ヤスリがかけやすい
・アセトンで表面処理ができる

ABSは、靭性が高いので、割れにくいという特徴がある。そのため、ルアーのキャスティングに失敗して、コンクリートにぶつけても割れが発生しにくい
そして、ヤスリがけがしやすいので、造形した表面の段差を簡単になめらかにできる
そのうえ、アセトンという溶剤を使えば表面が溶けるため、アセトンを気化させた容器に吊るして入れるだけで簡単に表面をツルツルに仕上げられるという特徴がある
仕上げにこだわるのであれば、ABSがオススメだ。ちなみに、私は仕上げにはこだわらないのにABSを愛用している。

ABSのデメリット

ABSのデメリットは、

・造形できる機械が限られる
・造形時に反りやすい
・機械の設定がシビア

ABSは溶かすのに200℃以上の温度が必要になるので、高温に対応した機械が必要になってしまう。そのうえ、造形後も高温を保たなければ反ってしまうので、ヒーテッドベッドと呼ばれる高温の造形テーブルも備えていなければまともに扱えない。
上記のような装備を備えた機械であっても、気温が低くなる冬場には、造形物が反ってしまうトラブルが頻発する。ゆえに、3Dプリンタの使い方を理解していなければ、トラブルに悩まされてしまうだろう。

ルアー作りにはPLAかABSか

結論から言うと、

・3Dプリンタの造形が楽なのはPLA
・造形後の作業が楽なのはABS

このどちらかから好きな方を選ぶといい。どちらの素材も一長一短だ。

3Dプリンタ初心者はPLAから始めたほうが楽なのは間違いない。
機械への投資が少なくて済むのもPLAだ。材料コストもそれほど差はなく、PLAのほうが少し安い程度。5%も価格は変わらない。

ABSは3Dプリンタの設定がシビア。まともに造形できるまで苦難の道を歩みたいドMの君に最適だ。無論、私もドMなので安心してほしい。

オススメのABS

ABSのフィラメントは、いつもAmazonで購入しているPxmalionのもの。

いくつかの ABS フィラメント試したが、ものによっては反りが激しいものがあったり、積層目が裂けやすかったりする場合があるので注意が必要。このフィラメントは、それらの問題があまりなく、安定した造形ができる。価格も安いので気軽に使えるのが特徴だ。 PLAについては普段使用していないので、自分で探してみてほしい。

3Dプリンタでの造形

今回作成するルアーの造形では、一般的なルアー作りとは少し異なった造型方法をする。
特徴的なのは下記の3点

・貼り合わせ面を下にする
・ラフトをつける
・サポートは使わない

この3点について順番に解説しよう。

実際にプリントするとこんなにキレイに造形できる。

貼り合わせ面を下にする

貼り合わせ面を下にする理由は、最も安定する底面の造形を貼り合わせ面にしたいから。
下にルアーの外壁を向けてしまうと、表面が荒れてしまいがちだし、サポートを付けないとうまく造形できない。貼り合わせ面を下にすることで、キレイに面が整う側が表にくるのでルアーの外側を後で仕上げやすくできる。
仕上げの作業を楽にするには、張り合わせ面を下にしよう。

ラフトをつける

ラフトは、 造形物の下につける土台のようなもののことで、ラフトをつけると安定した造形ができる。
ロフトをつけない場合、造形テーブルの傷が写ってしまって、ルアーの貼り合わせ面がデコボコする可能性があり、今回の造形ではおすすめできない。
また、造形物の剥がれを抑制できるので、反りやすいABSには必要不可欠な存在だ。

サポートを使わない

サポートを使わない理由は、内部構造が複雑なためサポートを剥がす作業が大変だから。
サポートを使わなくてもルアーのRがかかった形状であれば、大抵の場合問題なく造形できる。
造形が安定しない場合のみ局所的にサポートをつけるのがおすすめ。

3Dプリンターの造形条件

私が3Dプリンターの造形条件を設定する上で意識している点を紹介する。

造形ピッチについて

私の場合フロアを造形する場合は ピッチ0.18 mm で造形している。これ以上細くしても、造形時間が長くなるだけで、造形時間に対して有益なほどの変化がない 。
造形ピッチが細かくなると、サポートのついていない部分が崩れやすくなる印象がある。そのため、ピッチ0.18 mm程度がおすすめだ。もちろん、きりのいいピッチ0.2 mmでも問題ない。

フィラメントの送り量について

3Dプリンターのルアーでは造形の精度よりも密閉度の方が重要だ。そのため、フィラメントの送り量については、一般的な量よりも少し多めに設定する方が密閉度が高くなるのでオススメ。
一層一層の樹脂量を多く出せば、より層同士が密着してくれる。
コーティングを施す際にも密閉度はあるに越したことがないので、できるかぎり送り量を高くしておこう。ただし、送りが多すぎるとヘッドが造形物に干渉したり、寸法が大きくなってしまうので注意。

ヘッドの温度について

造形時の温度についても、少し高めに設定した方が 一層一層の密着度が高くなる。
あまり温度を高くしすぎると、サポートのついていない部分が崩れやすくなってしまうので、その辺りは様子を見ながら調整する必要がある。
私は、スライサーで設定できる限界の240℃に設定するのが好みだ。

インフィルの形状について

インフィルの形状は、ハニカム形状をオススメしている。
インフィルは、造形物の内側の骨格のようなもの。ハニカム形状にすると強度的にも強いし、 安定した造形ができる。 他の造形でも、特に理由がない限りはハニカム形状のインフィルを おすすめする。

インフィルパーセンテージについて

ルアーの内部にウエイトを入れない場合、インフィルパーセンテージ(インフィルの密度)を高くする必要がある。
スライサーの設定によっても変わってくるが、ABS の場合は、おおよそ 60%から70%程度のインフィルパーセンテージにすると、ゆっくり としたフローティングになる。
私の場合は、インフィルパーセンテージは80%に設定し、一部に空間をつくることで、スローフローティングになるように調整している。ルアーの下側に重心を設定すると、ウェイトを入れなくてもルアーの天地が安定する。

冷却について

ABSは、収縮率が高いので時間をじっくりかけて冷却する必要がある
造形が終わったからといって、すぐに造形物を取り外してしまうと大きく反ってしまう。テーブルの温度が常温に戻るまで造形物を取り外さないのが理想だ。
私は、夜に造形を開始し、寝ている間に造形が終わって、ゆっくりと冷却されるようにするのをオススメする。ただし、夜中はガコガコ、ウィンウィンうるさいので寝付きが悪い人にはオススメしない。
ある程度量産体制が整ったら、ルアーを2~3個程度一気に造形するようにし、ゆっくり冷却していくのが綺麗な造形のコツだ。

最後に

最後に、私の3 D プリンターの設定を紹介しておく。

 

おすすめ のPxmalionのフィラメントを作った場合、こちらの造形条件で安定した造形ができている。

材料やカラーによっても微妙に造形条件が異なる場合があるので、その場合は微調整をかけていく。

次回はいよいよ組み立ての工程に入る。
組み立ての工程はあまり私も得意な分野ではないが、不器用であっても問題なく釣れるので安心して欲しい。

乞うご期待!

最新情報をチェックしよう!